
「ホームページを作りたいが、何から考えればいいのか分からない」「制作会社に相談したいが、準備不足のまま話しても大丈夫なのか不安」──。中小企業の担当者や経営者の方から、こうした相談をいただくことは少なくありません。
実際、ホームページ制作そのものより前の段階でつまずいている企業は多くあります。デザインのイメージは何となくある。競合のサイトも少し見ている。けれど、自社として何を伝えたいのか、誰に向けたサイトなのか、公開後にどう運用していくのかまでは整理しきれていない。こうした状態のまま制作を進めると、見た目は整っていても成果につながりにくいホームページになりやすくなります。
先に結論を言うと、ホームページ制作を依頼する前に本当に必要なのは、専門知識ではありません。「何のために作るのか」「誰に見てほしいのか」「何を載せるのか」「公開後どう使うのか」という基本事項を、自社なりに言語化しておくことです。
この記事では、これからホームページ制作を検討している中小企業の方向けに、相談前に整理しておきたい項目を分かりやすく解説します。完璧に決まっていなくても大丈夫ですが、最低限の考えがあるだけで、制作会社との打ち合わせの質も、完成するサイトの精度も大きく変わります。
この記事の目次
なぜ「制作前の整理」が重要なのか

ホームページ制作でよくある失敗のひとつが、「とりあえず作り始めてしまうこと」です。
古くなったからリニューアルしたい。競合が新しいサイトを公開していた。採用が弱いのでページを増やしたい。こうしたきっかけ自体は自然ですが、目的や優先順位が曖昧なまま進めると、途中で方向性がぶれやすくなります。
たとえば、当初は「会社案内として最低限あればよい」と考えていたのに、途中から「採用強化もしたい」「問い合わせも増やしたい」「更新もしやすくしたい」と要望が増え、結果として構成も予算もスケジュールも膨らんでしまうケースがあります。逆に、必要なページや訴求ポイントを十分に詰めないまま公開してしまい、あとから「思ったより反応がない」「結局、また作り直しになりそうだ」という状態になることもあります。
ホームページ制作は、単にデザインを整える作業ではありません。自社の情報をどう整理し、誰にどう伝え、どのような行動につなげるかを設計する仕事です。そのため、制作前の整理が甘いと、見た目以前の部分で成果が出にくくなります。
最初に決めたいのは「何のために作るのか」

制作前にまず整理したいのは、ホームページの目的です。ここが曖昧だと、必要なページも、載せる情報も、デザインの方向性も定まりません。
よくある目的には、次のようなものがあります。
- 会社案内として信頼感を伝えたい
- 問い合わせを増やしたい
- 採用応募につなげたい
- 商品・サービスの内容を分かりやすく伝えたい
- 既存顧客向けに情報発信や更新をしやすくしたい
大切なのは、これらをすべて同じ強さで追わないことです。もちろん複数の目的を持つこと自体は問題ありません。しかし、優先順位がないまま「全部やりたい」となると、サイト全体がぼやけやすくなります。
たとえば、採用強化が最優先なら、会社概要や事業説明だけでなく、働く人、職場の雰囲気、仕事内容、教育体制などの情報が重要になります。一方、問い合わせ獲得が最優先なら、サービス内容、実績、対応範囲、相談しやすさ、よくある質問などを厚くする必要があります。
ホームページは、目的によって設計が変わります。だからこそ、制作会社に相談する前の段階で、「このサイトで最も達成したいことは何か」を一度整理しておくことが重要です。
次に整理すべきは「誰に見てほしいのか」

目的と並んで重要なのが、ターゲットです。つまり、誰に向けたホームページなのかという視点です。
ここでありがちなのは、「できるだけ多くの人に見てもらいたい」という考え方です。もちろん間違いではありませんが、実務上はターゲットが広すぎると、誰にも刺さらないホームページになりやすくなります。
たとえば、同じ企業サイトでも、次のように想定読者は変わります。
- 新規取引を検討している法人担当者
- 地元で就職・転職を考えている求職者
- サービス内容を確認したい既存顧客
- 会社概要を確認したい金融機関や取引先
- まずは情報収集したい比較検討中の見込み客
誰に見てほしいのかが違えば、必要な情報も違います。法人担当者は、対応実績やサービス範囲、信頼性を見ます。求職者は、職場の雰囲気や仕事内容、安心材料を見ます。既存顧客は、更新情報や問い合わせ導線の分かりやすさを重視します。
ここでのポイントは、ペルソナを過剰に細かく作り込むことではありません。それよりも、「このホームページで最も優先したい相手は誰か」を、社内で共有できる状態にしておくことが大切です。
掲載したい情報を先に洗い出しておく

ホームページ制作の相談で意外と多いのが、「何を載せるかは制作会社が考えてくれると思っていた」というケースです。
もちろん、制作会社は構成提案や整理のサポートができます。しかし、自社の強みや、伝えたい内容、よく受ける質問、実際のお客様の反応などは、社内にしかない情報です。そこが出てこないと、どうしても無難で薄いホームページになりやすくなります。
事前に洗い出しておきたい主な情報は、次のようなものです。
- 会社概要、沿革、所在地、拠点情報
- 事業内容、サービス内容
- 強みや他社との違い
- 主要な実績や事例
- よくある質問
- 問い合わせにつながる導線
- 採用情報
- 更新したいお知らせやブログの有無
特に重要なのは、「お客様や求職者が実際に気にすること」を載せる意識です。企業側からすると当たり前のことでも、見る側にとっては判断材料になる情報は多くあります。
たとえば、どの地域まで対応しているのか、小規模な相談でも依頼できるのか、相談時に何を用意すればよいのか、更新は自社でできるのか、写真や原稿が揃っていなくても進められるのか──。こうした情報は、問い合わせ前の不安を下げるうえで非常に重要です。制作前の段階で、営業現場や電話・メールでよく聞かれる質問をまとめておくと、ページ構成に活かしやすくなります。
原稿・写真・ロゴなど「素材」の有無を確認する

制作をスムーズに進めるうえで、素材の整理は非常に重要です。ここでいう素材とは、文章だけではなく、ロゴデータ、会社案内パンフレット、商品写真、スタッフ写真、イラスト、動画、過去の掲載資料なども含みます。
制作が遅れやすい企業に共通しているのは、「何を使えるのか把握できていない」ことです。
- ロゴの元データが見つからない
- 写真が古い、または画質が低い
- 社内に使える紹介文がまとまっていない
- サービス説明が担当者ごとに微妙に違う
- 会社案内はあるがWeb向けに流用しにくい
こうした状態だと、途中で素材集めに時間がかかり、制作スケジュールが大きくずれます。また、掲載できる写真が少ない場合、サイト全体の信頼感や雰囲気づくりにも影響が出ます。
もちろん、最初からすべて揃っている必要はありません。ただし、「すでにあるもの」「ないもの」「撮影や作成が必要なもの」を整理しておくだけでも、打ち合わせはかなり進めやすくなります。
もし写真や動画が不足している場合は、撮影も含めて相談できる制作会社に依頼した方が、完成度は高まりやすくなります。ホームページは、情報の正しさだけでなく、見た人が受ける印象も大切だからです。
更新体制を考えておかないと、公開後に止まりやすい

ホームページは、公開したら終わりではありません。公開後にどう使っていくのかまで考えておかないと、更新が止まり、結局「古い会社」に見えてしまうことがあります。
ここで事前に整理しておきたいのが、更新体制です。
- お知らせやブログを更新したいか
- 社内で更新できるようにしたいか
- 更新は制作会社に任せたいか
- 採用情報や実績ページは定期的に増やすか
- 誰が更新内容を確認し、承認するのか
たとえば、「ブログ機能を付けたい」という要望はよくあります。しかし実際には、更新担当者が決まっておらず、テーマも決まらず、公開後に1回も更新されないケースも珍しくありません。
その一方で、更新項目を絞っておけば、無理なく続く場合もあります。たとえば「お知らせだけ自社で更新する」「採用情報の募集要項だけ更新できればよい」「実績追加は制作会社に依頼する」といった形です。
大切なのは、理想の運用ではなく、実際に続けられる運用を考えることです。ホームページの仕組みは、公開後の体制に合わせて設計したほうが無理がありません。
デザインの好みだけでなく「伝えたい印象」を共有する

ホームページ制作の打ち合わせでは、「こんな雰囲気にしたい」「このサイトの見た目が好き」といった話が出ることがよくあります。これは悪いことではありませんし、イメージ共有として有効です。
ただし、それだけだと危険です。なぜなら、見た目の好みと、自社が伝えるべき印象は、必ずしも一致しないからです。
たとえば、スタイリッシュで余白の多いサイトが好きでも、自社が伝えるべきなのが「親しみやすさ」「相談しやすさ」「地域密着感」であれば、そのまま持ち込むとズレることがあります。逆に、少し落ち着いたデザインの方が、信頼感や堅実さを伝えやすい業種もあります。
そのため、制作前に共有したいのは、単なる好みよりも次のような観点です。
- 信頼感を出したい
- 親しみやすさを重視したい
- 採用向けに明るさを出したい
- 高級感や専門性を出したい
- 地元企業らしい安心感を持たせたい
デザインは目的達成のための手段です。「かっこいい」「おしゃれ」だけで判断すると、見栄えはよくても成果につながりにくいホームページになることがあります。
制作会社に相談する前に、最低限まとめたい項目
ここまでの内容を、相談前のチェックリストとして整理すると次のようになります。
| 項目 | 事前に考えておきたいこと |
|---|---|
| 目的 | 会社案内、問い合わせ獲得、採用強化、情報発信など何を重視するか |
| ターゲット | 誰に見てほしいか、最優先の相手は誰か |
| 掲載内容 | 会社情報、事業内容、実績、FAQ、採用情報など何を載せたいか |
| 素材 | ロゴ、写真、原稿、パンフレットなど使えるものは何か |
| 更新体制 | 社内更新か外部依頼か、誰が運用するか |
| 伝えたい印象 | 信頼感、親しみやすさ、専門性、地域密着感など |
| 希望時期 | いつまでに公開したいか、急ぎかどうか |
| 予算感 | どの程度まで検討できるか、おおまかな想定はあるか |
すべてを完璧に決めておく必要はありません。むしろ、決まっていない部分があって当然です。ただ、これらを少しでも整理しておくことで、「何を相談すればよいか分からない」という状態から抜け出しやすくなります。
準備不足のままでも相談してよい。ただし、丸投げは危険

ここまで読むと、「ここまで整理できていないと相談してはいけないのでは」と感じる方もいるかもしれません。ですが、実際にはそんなことはありません。
ホームページ制作の相談は、方向性を整理するところから始まることも多いです。自社の課題や現状を一緒に整理しながら、必要なページや進め方を考えていくのも、制作会社の役割のひとつです。
ただし、何も考えずに完全に丸投げするのはおすすめできません。それでは、自社にとって本当に必要なホームページになりにくいからです。
重要なのは、完璧な準備ではなく、自社として今どんな課題があり、何を実現したいのかを少しでも言葉にしておくことです。その状態で相談すれば、制作会社からの提案も具体的になりやすく、打ち合わせも前に進みやすくなります。
ホームページ制作は「作る前の整理」で成果が変わる

ホームページ制作というと、デザインや機能の話に意識が向きがちです。しかし実際には、その前段階である「整理」の質が、完成後の成果を大きく左右します。
何のために作るのか。誰に見てほしいのか。どんな情報を載せるのか。公開後にどう運用するのか。これらがある程度整理されていれば、制作会社とのやり取りもスムーズになり、公開後に「思っていたものと違った」というズレも起きにくくなります。逆にここが曖昧なままだと、見た目は整っていても、自社に合わないホームページになってしまう可能性があります。
もしこれからホームページ制作やリニューアルを検討しているなら、まずは見た目の参考サイトを探す前に、自社として何を整理すべきかを確認してみてください。その一手間が、制作の質にも、公開後の成果にも大きく影響します。
ホームページ制作について「何から考えればいいか分からない」「自社に必要な構成から相談したい」という場合は、企画段階から一緒に整理してくれる制作会社へ相談するのがおすすめです。制作そのものだけでなく、目的や課題の整理から伴走できるかどうかが、納得感のあるホームページづくりにつながります。
執筆者プロフィール
株式会社エスエムティ WEBディレクター 平山 純一
みやぎ産業振興機構登録専門家。
IT業界・WEB業界に20年余従事。様々なWebサイトの企画立案・設計業務、進行管理などを主とするディレクション、コンサルティング業務を担当。ECサイト関連では運用・保守業務他キャンペーン企画等も手がける。仙台・宮城の中小企業の「強み」をWEBで可視化し、成果につなげる支援を得意とする。
